106話 ロマン派への誘い~ゲーテとの出会い [クラシック]

今日はメンデルスゾーンの作品からのご紹介です。
まずメンデルスゾーン自身の才能、偉業についてはこちら永遠の三重奏団のエッセイも重ねてご覧ください。

メンデルスゾーン◇歌の翼にのせて


1836年(27歳)に作られ、歌曲集「6つの歌」作品34の第2曲です。
詩はハイネによるものです。トスティも同じ詩で作曲しているのですがあまり知られていません。
この作品もそうですが、メンデルスゾーンの育ちの良さが全体の作品に表れ、のびやかで明るく私たちの心を潤わせてくれます。またシューマンと親友でもありましたがきっと、繊細で気難しいシューマンの大切な良き相談相手になっていたのでしょね。

歌の翼に愛しき君をのせて ガンジスの野辺へと君を運ぼう  そこは白く輝く美しい場所 そこは赤い花が咲きほこる庭  静寂の中 月は輝き すいれんの花 愛する乙女を待つ  スミレは微笑み 星空を見上げ バラが耳元で囁く 芳しきおとぎ話 かしこくおとなしい小鹿 走り寄り 耳をそばだてる 遠く聞こえる聖なる川の流れ 僕等は椰子の木の元に降り立ち  愛と平穏を満喫し 幸福に満ちた夢を見よう
歌◇Barbara Bonney メンデルスゾーン◇歌の翼にのせて
ヴァイオリン◇J. Heifetz メンデルスゾーン◇歌の翼にのせて

メンデルスゾーンが描いた水彩画
メンデルスゾーンが描いた水彩画

ハイネを詩をご紹介しましたが、メンデルスゾーンは文豪ゲーテ(1749-1832)とも関わりがありました。エッカーマンの「ゲーテとの対話」の中に老ゲーテが少年メンデルスゾーンに夢中になりワイマールの自宅で何度となくピアノ演奏をさせる光景を描いた文章があります。最初の出会いは1821年11月、メンデルスゾーン12歳、ゲーテは72歳でした。
出会う前にすでにメンデルスゾーンはゲーテの詩を読んでいたとのこと。その後1822年、1825年、1830年と再訪をしています。

さて、最後にゲーテとメンデルスゾーンの共通の何かを探していたところ詩集「オシアン」にたどりつきました。「オシアン」とはスコットランドの伝説上の王、そして詩人、叙事詩です。違う時代ではあっても同じ作品を読み影響を受け、自分たちの作品に表現していく作り手を改めて尊敬します。
ゲーテやメンデルスゾーンだけでなく、ルソー、ワーグナー、シューベルト他、作家、画家、音楽家に強く影響を受けただけではく、一般の人々にケルト民族を知ってもらう好機にもなりました。

ローラの岸のオシアン◇フランソワ・ジェラール

ローラの岸のオシアン◇フランソワ・ジェラール


もう一つのエッセイ「音楽と絵画の部屋」 Chapter10 シューベルトの手紙よりこちらもご覧下さい

 

本間くみ子 第3回 ピアノリサイタル→ロマン派への誘い
追記) シューマン著「音楽と音楽家」の中にメンデルスゾーンの無言歌集について触れている文章をご紹介します。
夕闇のせまる頃、ピアノの前に座って、何とはなしに夢見心地で指を遊ばせているうちに、知らず知らず小声で旋律を口ずさむといったようなことは、誰しも覚えがあるだろう。 たまたま、その人が、自分で旋律に伴奏をつけられ、ことに彼がちょうどメンデルスゾーンのような人だったとすれば、たちまち美しい無言歌ができる。勿論、まず詩について作曲し、次に言葉を削って発表すれば、もっと楽にできよう。けれどもそれは本当の無言歌ではないし、いわば一種の詐欺である。 しかしそんなことがあったら、その機会に、果たして音楽がはっきりと感情を伝えられるかどうかの試験をしてみるのも面白いから、その削った詩の作者に頼んで、できた歌に新しい言葉をつけてもらうとよかろう。 新しい詩が古い詩と一致したら、それこそ音楽の表現の確実さの証明だ。さて、この歌集をみてみよう。歌はみな日光のように明るい顔をしている。最初の歌は(甘い思い出)印象の純粋さと美しさを備えている。フロレスタンは「こういう歌を歌った人はまだまだ長い生命が期待される。生前はもちろん、死んだ後もこの曲は長く残るだろう」・・・
シューマンの言わんとするところ、大変分かります。まさに文学を音楽に近づけた方の言葉です。 私もこの無言歌集は大好きです。気持ちが沈んだ時にも、最初のひとフレーズを聞いた瞬間にふわりと心を軽く誘ってくれるのです。よろしければその無言歌集の中から第1曲目「甘い思い出」をお聞きください。
メンデルスゾーン◇無言歌集「甘い思い出」 ピアノ 本間くみ子


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