96話:奇跡的な復活上演 [クラシック]
早いものでもう3月を迎えました。やがて春分の日も訪れます。この時期ヨーロッパではイースターというお祭りがあるのもご存知の事でしょう。十字架にかけられたキリストが亡くなり、3日目に復活したとされる最も重要、記念すべき日。春分の日の後、最初の満月の次の日曜日に祝われている復活祭(イースター)にちなんだ作品を今日はご紹介します。
この曲を作るにあたり、当時復活祭前40日は「受難と復活に向けての準備期間」でありすべての歌舞音曲が禁止されていました。多忙なバッハはおそらくこの期間を利用してこの大規模な受難曲や復活祭のためのカンタータを準備する事ができたのであろう、という事です。
バッハ◇マタイ受難曲より 52.「アリア:わが頬の涙」
まずこれほどの大曲、大作を取り上げるにはこの小さなページではあまりにもお粗末なのではないか・・とも考えたのですが今後もシリーズとして再び取り上げていきたいと思います。
グイド・レーニ(1575-1642 伊)◇聖マタイと天使
バッハはドイツ生まれ、1685年~1750年の生涯、当時としては比較的長生きをした音楽家です。また大きく3つの活動時期に分けられます。
ワイマール時代 1708年~1717年 23才~32才 ケーテン時代 1717年~1723年 32才~38才 ライプツィヒ時代 1723年~1750年 38才~65才
そしてこのマタイ受難曲はライプツィヒ時代を代表する作品であると共に、バッハ全作品中の最高峰に位置づけられる作品でもあるのです。しかしながら残念な事に1727年ライプツィヒの聖トーマス教会で初演された時はそれほどの評価を受けませんでした。以後改定を繰り返し1736年に完成したといわれています。
ところが今日私たちがこの大作を知る事が出来た裏には、そのおよそ100年後1829年に「奇跡的な復活上演」があったからなのです。それはロマン派作曲家、メンデルスゾーンの貢献、偉業によって歴史的な上演がなされた事により、バッハの再評価につながったからなのです。
ゴッホ(1853-1890 和蘭)◇ピエタ(哀れみ、慈悲)
<作品について>
新約聖書「マタイによる福音書」の26,27章のキリストの受難をテーマにしたもの。多くの独唱、合唱、オーケストラを伴う大規模な音楽作品です。演奏時間はカット無しで約3時間、最近のピリオド奏法では2時間30分という長編です。
第一部 : イエスの捕縛まで
導入の合唱 / 十字架の士の予告 / 祭司長たちの合議 / 香油を注ぐベタニアの女 ユダの裏切り / 晩餐 / オリーブ山にて / ゲッセネマの苦しみ / 捕縛
第二部 : イエスの捕縛、裁判、磔刑、埋葬と封印まで
人気なき園に花婿を探すシオンの娘とエルサレムの娘たちの同情 / 大祭司の審問 / ペテロの否認 / ユダの後悔と末路 / 判決 / 鞭打ち / 十字架の道 / 十字架上のイエス / イエスの死 / 降下と埋葬 / 哀悼
それぞれのタイトルには合唱と独唱があります。合唱=コラール=群集=公的に対して、独唱=アリア=イエス・ペテロ・ユダ・ピラト・大祭司等の聖書引用部分にもとづいた台詞、そしてバッハ自身の感情、意思、思考表現の要素があります。
ドラクロワ(1798-1863 仏)◇埋葬
たとえ私の頬に涙が流れなくても、おお、私の心を受け取って下さい。しかし主の傷が慈しみ深くも血を流すとき、私の心をこの血で満たし、捧げ物の皿とならせて下さい。 52番:アリア「我が頬の涙」
今日の1曲◇バッハ:主よ、人の望みの喜びを
youtubeに現在私自身の演奏を56曲アップしています
ピアノ:本間くみ子
録音スタジオ:ソフィアザールサロン
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